東北で障害者の解雇が急増 24年度は720人、前年の1・7倍に 背景に何が…(河北新報)
(「河北新報」令和7年9月12日(金)付け記事より引用)

東北6県で2024年度に公共職業安定所に届け出があった障害者の解雇者数が720人に上り、前年度(417人)の1・7倍に急増したことが、厚生労働省の集計で分かった。就労継続支援A型事業所の閉鎖に伴う解雇者が7割を占め、昨年4月に国から支給される報酬が引き下げられた影響で事業継続を断念したケースが多いとみられる。最低賃金の大幅引き上げも迫り、事業所は先行きに危機感を募らせる。
報酬改定で「A型」閉鎖相次ぐ
[就労継続支援A型事業所] 障害者総合支援法に基づく就労支援事業の一つ。一般企業で働くのが難しい心身障害者と雇用契約を結び、働く場を提供する。原則として最低賃金以上を収益から支払う。職種は主に事務や清掃、製造、クリーニングなどで、東北では農業や食品加工も多い。事業所は国から障害福祉サービスの報酬(給付金)や雇用保険の助成金を受け取る。B型は雇用契約に基づかない就労で工賃を支払い、最低賃金は適用されない。
国の報酬は、労働時間や生産活動のほか、多様な働き方、知識・能力向上などを評価して算定する。厚労省は昨年4月、事業の収益で賃金を支払えない事業所の報酬を大幅に引き下げる改定を実施。公費に依存した経営の改善を促そうと収益性を重視する姿勢に転換した一方、収益増を見込めない事業所の多くが閉鎖に追い込まれた。
東北では、青森県の解雇者数が253人と最多で、このうちA型の閉鎖は9施設204人と80・6%を占めた。次いで宮城県が140人で、A型は5施設89人で63・6%だった。
青森労働局の山田智雄地方障害者雇用担当官は、A型の閉鎖が増えた要因として報酬改定に加え「業務を提供する協力企業の経営悪化の影響を受けた事業所が多い」とみる。
A型閉鎖などに伴う解雇は本年度に入っても収まっていない。部品組み立てやデータ入力など幅広い業務を展開していたポラリス(宮城県富谷市)は8月、仙台地裁から破産手続き開始決定を受けた。負債額は約7000万円。富谷市地域福祉課は「他の就労支援施設が事業を引き継ぐと報告を受けた」と説明し、利用者の雇用は継続される見通しだという。
硬式野球ボールを製造するA型事業所を運営するユニオンソーシャルシステム(山形県新庄市)は2月、全7事業所を来年3月末で閉鎖し、利用者217人を解雇、転職を支援する計画を発表した。ホームページで閉鎖理由を「社会保険料の負担増に対応できない」と説明。報酬改定にも言及し「収支が賃金を下回ることで評価の減点や閉鎖リスクが高まる」と業界の先行きを不安視する見解を示した。(藤原陽)
最低賃金の上昇で負担増 懸命に対応する事業所も

東北の最低賃金(時給)は、宮城県で10月4日から65円アップの1038円となるなど、本年度の改定により6県全てで1000円の大台を初めて超えた。引き上げられた最低賃金への対応も、障害福祉サービス事業所の課題になる。
仙台市のNPO法人「ほっぷの森」はA型事業所としてレストラン2店を宮城野区で運営し、知的障害などの12人を雇用している。今回の最低賃金引き上げに伴い、人件費は年間100万円を超える増加が見込まれる。菊田俊彦理事長は「人件費増に見合う売り上げ増が必要になる」と覚悟する。
店の一つが、東北福祉大仙台駅東口キャンパス1階の「TFUカフェテリア・オリーブ」。利用者12人はもう1店を含めた交代制で、ホールでの接客やドリンク、ケーキの準備、調理補助、経理などに従事する。
平均年齢は43歳。最低賃金以上の給与で雇用契約を結び、希望者は一般企業での就労に向けた教育を受けられる。管理するスタッフは体調を観察して小まめに声をかけ、生活指導も行う。
A型事業所は、安定した収益を維持する企業経営と細やかにケアする福祉教育の両面が求められる。菊田理事長は「経済と福祉のバランスの維持は難しいが、強固な経営基盤を築きながら(賃上げ、報酬改定という)時代の変化に対応しなければならない。必死に食らい付いていく」と語る。
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